糖尿病患者に必要なインスリン、GPL-1、インスリンポンプ、CGMなどは、要点を守れば飛行機に持ち込むことができます。
一部のクリニックのホームページには、機内持ち込みができますと記載がありますが正確には間違えです。
無条件で機内に持ち込むことはできず、証明書などの書類が必要になる場合や場面があります。
また、各航空会社によってルール・規制・手続きが異なるので、手続きが簡素な航空会社を選ぶことも大切です。
注意する点なども含めて解説します。
インスリンを飛行機に持ち込みたいならコードシェア便(共同運航便)は選ばない
何かしらの医療サポートを必要とする場合、コードシェア便、共同運航便などを選ばないことです。
(例:医療機器の持ち込み、特別機内食の申込み、乳児のベビーベットの用意なども該当します)
例えば、日本の航空会社便を予約したつもりでも、それが海外系の航空会社のコードシェア便・共同運航便だった場合、海外系の運航会社の規定が適用されます。
この場合、日本の航空会社では大丈夫だったものでも、海外系の運航会社では申請をしなければダメだったなどの制限が出てしまいます。
航空会社に何か特別な事をお願いするときには、コードシェア便の場合「その要望はできません」といわれることがあります。例えば
- 予約の受付開始及び受付期限
- 事前座席指定
- 機内持込手荷物制限
- 危険物ならびに大型手荷物の制限
- 幼児/小児/妊婦の搭乗条件
- 動物の運送条件(サービスドッグ含む)
- 配慮を要する旅客の運送条件
- 運送の拒否
- チェックイン締切時間
- オーバーブッキングによりお客様へ座席を提供出来ない場合の補償
- 手荷物の紛失ならびに破損時のお客様への補償
- イレギュラー時(遅延・欠航など)の対応
これらは航空会社間で内容が異なるので、個々に確認するしか方法がありません。
航空券を予約をしてから「知らなかった。こんなはずじゃなかった」とならないように、航空会社を決める際には気を付けてください。
コードシェア便の見分け方
東京➡バンコク(タイ)17:25―21:55のフライトの場合、タイ国際航空が運航会社、エア・カナダとANAは運航を行わない会社です。
よって、ANAの航空チケットを買っても、タイ国際航空の規定が適用されます。
そして、タイ国際航空が「コードシェア便の場合、これはできます」とOKを出したものだけが利用できます。
この内容はタイ国際航空のチケットを購入した人が受けられるサービスよりもはるかに少ないということになります。
上記のフライトの場合、運航会社であるタイ国際航空のチケット購入すれば、タイ国際航空のサービスが受けられます。
上記の東京➡バンコク(タイ)19時発のフライトなら、ANAが運航会社となっています。日系のサービスを受けたいなら、ANA運航を選ぶのが安心です。
コードシェア便を利用するときの注意を各航空会社では案内しています。詳しくは各航空会社に問い合わせてください。
➡JAL コードシェア便のご案内
➡ANA コードシェア(共同運航便)について
インスリン、GLP-1を機内で使用する場合の準備まとめ
航空会社にインスリン、GLP-1の飛行機の持ち込み、その他の事項の連絡をする
インスリンやGLP-1を打つための注射器・インスリン製剤・血糖値測定器は、基本的に持ち込みできます。
持ち込むときには書類や事前申請が必要です。
航空会社 | 事前の申請 | 糖尿病食 | 書類・証明書 |
---|---|---|---|
日系(ANA&JAL) | 不要 | あり | 書類必要(保安検査用※) |
外国航空会社 | 必要 | あり | 書類必要(保安検査用※) もしくは診断書提出 |
※保安検査用の書類は、糖尿病手帳や英文診断書などです。
JAL、ANAの場合
JAL、ANAでは以下の記載があります。(※最新情報はご自身でご確認ください。)
糖尿病です。インスリンと注射器を機内で使用する場合は診断書が必要ですか。
糖尿病のお客さまは、安定した状態であり、かつご自分で服用、インスリン注射などが行えるならば航空会社として診断書の提出は必要ありません。
JALQ&A 詳細 糖尿病です。インスリンと注射器を機内で使用する場合は診断書が必要ですか。より引用
インスリン注射・エピペンなどの自己注射器や、医師から処方された在宅自己注射薬剤を投与するために使用する自己使用注射等の針については機内へお持ち込みご使用いただけます。事前申告や医師の診断書のご提示は必要ありません。
ANA インスリン注射・エピペンなどの自己注射器のお持ち込みについてより引用
上記の引用部分は「診断書の提出」部分だけの言及となっています。
JAL、ANA利用ならインスリンやGLP-1利用の連絡はしなくてもいい?
日系なら事前連絡を必要としていないから、連絡しなくてもいいんじゃない?と思いがちですが、実はそうではありません。
往復問題なく予約した便に乗れれば「連絡しなくてもすんだ」となりますが、旅にはトラブルがつきものです。
予測できないトラブル回避のために、事前に自身の情報を伝えておきましょう。
台風、機材故障、欠航などさまざまなトラブルで、他社の便に振替などということも考えられます。
他社便に振替があったときにどうなるかというと、インスリンやGLP-1を持ち込む申請書がないとダメ、もしくはインスリン、GLP-1は持ちこめないなどという事態になります。(他社便に乗るという時点でインスリンは持ち込めないと考えてください)
このようなことを防ぐためにも「自分はインスリンを持ち込みます」と事前に航空会社に伝えてください。
航空会社では「この人はインスリンを持ち込むので、他社便への振り替えはできない」という判断ができます。
外国系航空会社の場合
外国航空会社の場合、インスリン、GLP-1の持ち込み申請をする必要があります。
申請書類の提出が必要となるので、航空券を予約した航空会社または旅行代理店を通して、必要書類の確認、提出をする必要があります。
GLP-1の機内持ち込み関する注意点
一部の航空会社では、インスリン製剤のみ特別対応で航空会社診断書が不要で、GLP-1は航空会社の診断書(MEDIF)が必要な会社があります。
GLP-1を常用している場合は、一時的にインスリン製剤や経口薬、週1回タイプへの変更を検討しても良いでしょう。
糖尿病用の特別機内食を予約する
機内食には、糖尿病食(DBML)や低カロリー食(LCML)などがあります。
これらは特別機内食(スペシャルミール)と呼ばれ事前予約が必須です。
食事が運ばれる時間の目安やカロリーなども質問できます。
▼機内特別食(スペシャルミール)の種類と予約方法はこちらから▼
インスリン注射は機内のどこで打てる?
インスリンの注射は座席で打てるのか、その他のところなのか確認をしておくと当日困りません。
航空会社によって異なるので聞いておくと安心です。
目的地で利用するための準備
医薬品の持ち込みは渡航先で持ち込み可能・持ち出し可能かの確認事前にしておく
日本から持って行く医薬品が渡航先で持ち込み可能なものなのか、出国時に持ち出し可能なものなのかのチェックをしてください。
➡厚生労働省 海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続きについて
薬の添付文書は重要!!
薬品を海外に持ち出すには、製剤の添付文書(日本語・英語)の準備をするのがよいです。
海外の保安検査場で、英語もしくは現地語で正しい説明ができないために製剤と理解されず危険物と見なされ廃棄させられる場合があるからです。
製剤と証明するため、英文添付文書があれば海外でも誤解を受けることがありません。
現地で薬剤と証明できない場合、現地警察などから拘束される可能性があるからです。
添付文書の日本語版は添付されていたり、ネットからダウンロードできます。英語版もダウンロードできます。
ネットがない、英語が心配で不安な場合は、調剤された薬局で手配できるので、かかりつけ薬局に相談しましょう。
出発前の準備
目的地に出発するために、さまざまな準備が必要になります。
処方箋(日本語・英語)や診断書(日本語・英語)は一緒に持ち歩き、注射が治療上必要な事がわかるようにしておいてください。
国際線において液体物持ち込み規制が導入されていますが、インシュリン液などの医薬品類は例外扱いされているため、ビニール袋に入れていただかなくても、客室内への持ち込みが可能となっています。
ただし、客室内で使用する量に限ってと条件がありますので、予備につきましてはスーツケースの中にお入れいただくようお願いいたします。
医療機器・医療品 | 成田国際空港公式WEBサイト (narita-airport.jp)より引用
機内でインスリン注射をするために、インスリンとアルコール綿などを一緒に入れておくと便利です。
インスリンは注射薬が凍ることが無いよう、機内持ち込み手荷物にします。(チェックインカウンターでスーツケースに入れて預けてしまうと、スーツケースが紛失したときに困ります)
医薬品などは、紛失などのリスクを防ぐためにも機内持ち込みするのが安全です。
低血糖の対策になるものも忘れずに持って行きます。
「糖尿病患者用IDカード」なども必要です。
その他ご自身で外出時に持って行くものを揃えてください。
自宅から飛行機に搭乗するまで、日本に到着から自宅までは日本の医療機関での受診が可能
飛行機に搭乗することばかりを考えると、機内のことばかりに気持ちが傾いてしまいます。
自宅から飛行機に搭乗するまで、日本の空港に到着から自宅までは日本での対応と同じです。
万が一に備えて、健康保険証・お薬手帳(薬剤一覧表)などを持っていれば安心です。
受診先の医療機関からかかりつけの病院に連絡をしてもらって確認後処方してもらうなどの処置をする方法もあります。(診療時間外の事もあるので、お薬手帳は大事です)
インスリンポンプは飛行機で使用できますか?
自動的にインスリンが注入されるメドトロニック社製(medtronic)やデクスコムジャパン社製(Dexcom)などのインスリンポンプは、飛行機内持ち込めます。
インスリンポンプは医療機器に該当されるので、機内持ち込みと使用は医療機器の持ち込み申請が必要です。
インスリンポンプ(医療機器)持ち込み申請
航空会社へのインスリンポンプの持ち込みの申請は以下の内容となります。
- インスリンポンプのメーカー名
- 製品名
- 型番
- 大きさと重さ(縦、横、厚み)
- 耐空証明の承認番号
- 電池種別(アルカリ電池やリチウムイオン電池等)
インスリンポンプを機内で利用するには医師の診断書が必要
飛行機内でインスリンポンプを利用する場合、医療行為中とみなされるので、医師の診断書(MEDIF)が必要です。
各航空会社により対応が異なるので、詳しい申請方法は航空会社に確認してください。なお、日系航空会社は、診断書不要です。
インスリンポンプの機内での使用は、さまざまな制限が多いです。常時使用する場合は、日系(JAL&ANA)のフルサービス航空会社を利用するのがおすすめです。
インスリンポンプを装着しての保安検査に注意
新千歳空港・茨城空港・羽田空港・成田空港・中部国際空港・関西国際空港・福岡空港などの主要空港の保安検査場では、ボディスキャナーを使用して保安検査を行っています。
機器の故障予防の為、インスリンポンプは、ボディスキャナーや手荷物X線検査が受けられません。
保安検査の際に医療機器であることを伝え、通常の門型金属探知器、X線手荷物検査等の検査方法に代えて接触検査等による保安検査をしてもらうようにしてください。
メーカーホームページからエアポートカード(日本語と英語の2か国語)をダウンロード、印刷して保安検査場で見せられるように用意しましょう。
エアポート医療機器情報カード
➡【製品使用者向け】ミニメド™640Gシステム 資料ダウンロード|糖尿病 製品情報|メドトロニック (medtronic.com)
➡【製品使用者向け】ミニメド™770Gシステムの使い方|糖尿病 製品情報|メドトロニック (medtronic.com)
➡【製品使用者向け】ミニメド™780Gシステムの使い方|糖尿病 製品情報|メドトロニック (medtronic.com)
➡Dexcom G6 CGMシステム
➡患者さん向け:患者さん向けダウンロード資材|FreeStyleリブレ情報サイト (myfreestyle.jp)
帰国時の保安検査の時には英語版のエアポートカードが必要となります。
インスリンポンプにトラブルが生じた場合に対応できるよう、代替手段としてペン型注射器を持っていく、旅行先の医療機関など緊急連絡先を確保しておくなどの工夫は必要です。
インスリンポンプ療法 はじめてガイドより引用
また、飛行機を利用される際、空港保安検査場(セキュリティーゲート)での手荷物検査などのX線検査やボディースキャナーにインスリンポンプを通さないでください(金属探知検査は通しても問題ありません)。
空港保安検査場を通る場合は、保安検査官にインスリンポンプを使用していることを申し出てくださ
インスリンポンプ機内持ち込みのまとめ
インスリンポンプは医療機器です。
医療機器は航空会社毎に対応が異なるので、機内に持ち込むときには航空会社に申請をしてください。
旅行会社が行う航空会社未定のツアーの場合でも、旅行会社にインスリンを携帯することを説明し、必要な手配を旅行会社経由で行うか、航空会社の予約センターに電話などで持ち込む際の注意点を確認する必要があります。
インスリンポンプ療法JP インスリンポンプのメーカーのホームページです➡かくれ血糖.jp ~糖尿病の血糖管理は点から線へ。いい明日が見えてくる~ (medtronic-dm.jp)
CGMは飛行機で使用できますか?
持続グルコースモニタリング機器のCGM機器(Dexcomやリブレ)は、申請をすると機内に持ち込み使用することができます。
ただし、機内で使用する場合、CGM機器のセンサーと本体の接続方式が「有線、非接触、無線、Bluetooth」によって使用できないことがあります。
常時使用可能(許可された場合に限る) | 飛行機のドアが閉まったら、本体とセンサーの電源オフが必要 |
---|---|
有線・Bluetooth | 非接触・無線 |
非接触や無線タイプのCGM機器は、センサーと本体との通信にBluetoothや同じ周波数帯を使用した電波を使用しています。
しかしながら、Bluetooth以外の機内の電波使用は、たとえ医療機器でも航空保安法によって制限がされています。
無線の電波が飛行機のアンテナを経由して機内に入り、航空機器が正常なデータを受信できなくなるためです。
そのため、許可されていない「安全な利用(機内モードを使うなど)状態」にしていなかった場合、安全阻害行為等になった場合50万円以下の罰金が課せられることがあります。
機器の故障予防の為、CGM機器は、ボディスキャナーや手荷物X線検査が受けられません。
保安検査では、金属探知ゲートにも反応します。保安検査員による接触検査が必要になり時間がかかることも覚えておきましょう。
CGM機器は、CT検査やX線検査を受けることができません。
しかし、機内持ち込みや預け入れ手荷物はCTやX線を使用した爆発物検査装置(EDS)を使用しています。
CGM機器の破損を防ぐためにも、飛行機に乗るときには機内持ち込みで保安検査員によるがおすすめです。
GDS/CRSのインスリン等のSSRコードは?|旅行会社向け
以下は、プロの旅行会社向けコードについての説明と解説です。
予約情報にはインスリン等のSSRコードの設定はありません。
インスリン等などは、CKINコメントで入力するため、航空会社でしか入力ができず、インフィニのPNR VIEW機能でCKINコメントが見れる場合があります。(エントリーは、># ANA /* XXXXXX * XはANAのPNR)
特別機内食(SPML)は、SSRから指定できます。
対応する糖尿病食(DBML)や低カロリー食(LCML)は、端末上からSSRでの入力が可能です。
先にSSRで情報を入力しておくと、航空会社とのやり取りがスムーズになります。
インスリンポンプとCGMは、MEDAになることも多いのでMEDIFの押さえておくべきポイントを各航空会社の予約課に確認しておき、提出期限やMEDIFの再提出が無いようにしておきましょう。
また、MEDIFのダウンロード方法やページを確認しておくことも大切です。